第80章

茅野梓は眉間にしわを寄せた。今はこうするしかないようだ。

前で運転していた吉田さんは見かねて、思わず一言忠告した。

「東さん、足が不自由なのに、ここからまだ二時間以上もかかりますよ。いつまで歩くつもりですか。茅野さんの友達はバイクを持っているんでしょう?茅野さんがバイクに乗せてもらえばいいじゃないですか」

言葉が終わるか終わらないかのうちに、茅野梓に反論された。

「日差しが強すぎて、肌がダメになっちゃうから、もうバイクには乗りたくないの。それに私の友達はおじさんと一緒にいるのが嫌みたいだから、先に帰らせたわ。お父さんの体はずっと丈夫だし、たくさん歩くのは健康にいいでしょ。吉田さん、運...

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