第83章

彼の心は理由もなく柔らかくなり、視線をそらして、「入れ」と言った。

岩崎奈緒は彼が気が変わるのを恐れるかのように、彼の部屋へと続いた。

部屋の中には新たに机が一つ置かれ、その上には電源の入ったパソコンと、処理中の書類の山があった。

藤原光司はいつも忙しそうで、こうして出張中でさえも、様々な書類を持ち歩いていた。

岩崎奈緒はこの瞬間、後継者に選ばれたのは、才能だけでなく、こういった努力があるからなのかもしれないと知った。

誰もが最初からこの仕事をこなせるわけではなく、この責任を担えるわけでもない。

彼女はパソコンのある机には近づかず、適当な椅子を見つけて座った。

藤原光司は机に向...

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