第84章

話が終わらないうちに、井上進が外から入ってきて、藤原光司の傍らで恭しく言った。「社長、岩崎家から電話がありまして、一緒に食事をしたいとのことです」

藤原光司の目に一瞬、嘲笑の色が走った。食事?

おそらくお爺さんが戻ってくるという話を聞いて、これで自分を完全に繋ぎ止められると思っているのだろう。

この一家に対しては、本当に辟易していた。

「断れ」

井上進はこの言葉を聞いて、恭しく頷いたが、何か思い出したように、一言付け加えた。

「岩崎雄大さんが、岩崎奈緒さんはずっと社長との面会を楽しみにしていて、特別に得意料理を何品か作ったとおっしゃっていました」

主人公の岩崎奈緒は藤原光司の向...

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