第85章

吉原素素もやや気まずく、林田東は隣でうろたえるばかりだった。

「叔父さん、叔母さん、それでは失礼します」

岩崎奈緒はもう彼女を相手にせず、そう告げた。

吉原素素と林田東は慌てて見送りに出ようとし、自ら路地の入り口まで送って行った。

岩崎奈緒は少し考えた後、やはり尋ねずにはいられなかった。

「叔父さん、Z郡で大企業の社長が観光開発をするという話がありましたよね?もし本当に立ち退きになったら、そのお金はどうするつもりですか」

この小さな県の不動産は安く、二千万円もあれば広々とした4LDKが買える。

その話が出ると、林田東の顔に興奮の色が浮かんだ。

「お前の従兄が作った借金がまだ三...

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