第87章

彼女は茅野梓のあの性格がずっと前から気に食わなかったが、叔父と叔母がずっと我慢していたせいで、今の性分が出来上がってしまったのだ。

林田東は、岩崎奈緒が少しも助け船を出そうとしないのを見て、途端に焦り出した。

「梓がわざとやったとしても、この件は話し合いの余地があるんじゃないか。私たち一家が梓に申し訳ないことをしたと、おまえも知っているだろう。もし離婚すると騒ぎ出したら、おまえの従兄はもう嫁をもらえなくなる。あいつが顧客の金を横領して、闇金に手を出したことはとっくにZ郡中に広まっている。これからどこの家の娘がうちなんかに嫁ぎたいと思う？梓だけが嫌がらずにいてくれるんだ。もし梓に何かあった...