第91章

白石秋は冷ややかに笑った。「どこか至らなかったわけじゃない。あなたたち岩崎家が藤原家に釣り合わない、ただそれだけのこと。心の中では分かっているはずよ。藤原おじいさまの命を救った恩がなければ、彼女と光司に可能性なんてありはしなかった」

普段は口の立つ鈴木蘭も、白石秋を前にしては一言も反論できなかった。

ただ、岩崎奈緒が不甲斐なく、藤原光司の心を繋ぎ止められなかったせいで、自分と岩崎雄大までがこんな屈辱を受ける羽目になったのだと、腹立たしく思うばかりだった。

白石秋は岩崎奈緒に目をやったが、彼女が相変わらずの淡々とした態度を崩さないのを見て、さらに腹が立った。

「この契約書には、一年後に...

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