第93章

数人に支えられながらお爺さんが帰る道すがら、藤原おじいさんはやはり我慢できずに岩崎奈緒へ電話をかけた。

その頃、岩崎奈緒はまだ廊下に立ち尽くしていた。医者のあの言葉のせいで、骨の髄まで冷え切ってしまったかのように感じていた。

電話の着信音が鳴り響き、ようやく混沌とした状態から我に返った。

指先はこわばり、思わず手をこすり合わせてその冷たさを振り払ってから、通話ボタンを押した。

携帯の画面にはすでに時間が過ぎていることが表示されており、藤原おじいさんを迎えに行く機会を逃してしまったことに気づく。

彼女は慌てて謝罪した。

「お爺様、申し訳ありません。父が急に入院することになりまして、...

ログインして続きを読む