第40章 千田愛由美を庇う

千田愛由美は車椅子の肘掛けを固く握りしめて平静を装ったが、その動揺を隠しきれてはいなかった。

日野遥斗はスマートフォンを操作する。「音声データです。皆さん、よく聞いて、これが千田愛由美の声かどうか、しっかりとお確かめください」

その言葉が終わるや否や、低く冷たい声が響いた。「もういい」

皆の視線が、それまで一言も発していなかった今泉拓真に注がれた。

今泉拓真は立ち上がり、「日野社長、少しお話を」

日野遥斗は口角を上げ、スマートフォンをしまうと、彼と共に三階の書斎へと向かった。

部屋の扉が閉められ、今泉拓真は掃き出し窓の前まで歩いていくと、煙草に火をつけ一服し、単刀直入に切り出した...

ログインして続きを読む