第84章 彼はもうだめだ

小島麻央はびくりと身を震わせた。

男たるもの、自分がそっち方面で不能だなどと受け入れられるはずがない。ましてや、今泉拓真のような生まれながらにして誇り高い男なら、なおさらだ。

彼が目を覚ました時、どうやって現実と向き合うのか、彼女には想像もつかなかった。

医師はため息をつき、「申し訳ありません、今泉夫人。我々は全力を尽くしました」と言った。

小島麻央は気を取り直し、「わかりました。先生、ありがとうございます」と返した。

今泉拓真が病室に運ばれた頃には、空はすっかり明るくなっていた。

彼はまだ眠っている。小島麻央は少し躊躇ったが、やはり今泉家の祖母に電話をかけることにした。

最初...

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