第4章
今年の冬は、なんだか格別に冷えるようだ。
私は交差点で信号待ちをしながら、当てもなく人混みに目をやった。
突如、心臓が大きく跳ねた。その鼓動は耳元で轟き、胸を突き破らんばかりの勢いだ。
前にいるあの人、松本照一の後ろ姿にそっくりだ!
足が勝手に動き出す。私は急ぎ足のサラリーマンたちをかき分け、人波を突き抜け、見慣れたその輪郭を必死に追いかけた。
「すみません、すみません……」
謝罪を繰り返しながらも、足を止める勇気はなかった。その背中は一本の路地へと消えていく。私は速度を上げ、角を曲がったが、そこには空っぽの路地が広がっているだけだった。
彼は消えてしまった。まる...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
縮小
拡大
