第53章

二台の車が相次いで「星夜クラブ」のエントランスに滑り込んだ。水嶋舞羽は運転手に紙幣を押し付けると、釣りも受け取らずに、前を行く神代空成を追いかけた。

「女なんて乗ってなかったぞ、見間違いか?」

運転手はぼやきながら、車を発進させた。

ヒールで走る水嶋舞羽は息も絶え絶えだ。

「神代空成、ちょっと……待って……!」

神代空成は彼女を無視し、会所に足を踏み入れるなり、ロビーに飾られた二つの精巧な花瓶を乱暴に薙ぎ倒した。

「お客様……」

スタッフが驚いて駆け寄る。

だが神代空成は止まらない。飾り棚にあった観葉植物を蹴り飛ばし、血走った目で怒号を上げた。

「支配人はどこだ? 出せ!」...

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