第54章

その様子を見た水嶋舞羽は気が気ではなく、すぐに霧生嵐と月見優心に情状酌量を求めようとしたが、神代空成に遮られた。

霧生嵐は始終、氷のように冷徹な表情を崩さなかった。ただ、月見優心の手にある水膨れを目にした瞬間、脳裏に神代雪璃の傷だらけの細い足がフラッシュバックし、わずかに眉根を寄せただけだった。

彼は車椅子の後ろに回り込み、月見優心を乗せて外へ向かおうとする。

「霧生社長、月見さんを病院へ送られるのですか?」

紡木祈が歩み寄り、車椅子の背に手を添えた。

「社長はこの後、三十分後に重要な会議を控えておられます。よろしければ私が代わりに……」

霧生嵐は彼女に一瞥をくれ、平坦な声で告げ...

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