第1章
甲高い学園の予鈴が、私を深い闇の底から現実へと引き戻した。
弾かれたように顔を上げる。空気を求めて喘ぎ、冷や汗がシャツをぐっしょりと濡らしていく。心臓はまるで胸から飛び出さんばかりに、肋骨を激しく叩いていた。
あの息が詰まるような感覚、押し潰されそうな絶望、そして……あの汚い手……。
私は反射的に自分の体を抱きしめ、抑えようのない震えに身を任せた。
「コーデリア、大丈夫?」隣の席のエマが、心配そうに顔を覗き込んでくる。「悪い夢でも見ていたの? 涙が……」
頬に触れると――濡れていた。
「ええ……ただ……」声が震える。「とても恐ろしい夢を……」
けれど、どうしてこれほど生々しいの? あの路地裏の悪臭が鼻をつき、制服が引き裂かれる音がまだ耳に残っている……。
「叫ぶんじゃねえよ、嬢ちゃん。誰も助けに来やしねえぞ……」
「いつも偉そうにしてたじゃねえか? 今はどうだ、ええ?」
「お前の可愛い妹が俺たちを寄越したんだよ……お前が欲しがってるってな……」
吐き気を堪え、私は口元を押さえた。
あの男たちの声、汚い言葉が頭の中で響いている。あの荒い手の感触、心が壊れそうな苦痛、そしてもう死んでしまいたい気持ち……。
乱れた衣服、涙に濡れた顔で教室に戻った時のこと。クラスメイトたちの表情が、同情から軽蔑へと変わっていったあの瞬間を鮮明に覚えている……。
「あいつらとヤったんだってよ……」
「最低……」
「公爵令嬢ともあろうものが……」
受話器越しに響く、お父様の冷徹な声。「コーデリア、君に言葉にならないほど失望した。もはやアシュワース家の跡取りたる資格はない」
その直後に襲ってきた、あの激痛。体は痙攣し、冷や汗が流れた。この机の上で突っ伏し、世界が遠のきながら、命が消えていく感覚だった……。
「コーデリア? 本当に大丈夫?」エマの声が、私を現実へ引き戻す。「保健室に行ったほうがいいんじゃない? すごく辛そうよ……」
首を横に振り、必死に自分を落ち着かせようとする。ただの夢。そう、ただの夢よ……。
けれど、なぜこの苦しみがこれほどリアルなの? 死ぬ直前の、あの窒息感さえ覚えているというのに……。
「エマ」私は震える声で尋ねた。「今日は何月何日?」
「九月十五日だけど」エマは不思議そうな顔をした。「新学期が始まってまだ二週間じゃない。日付も忘れちゃったの?」
九月十五日……。
嘘……ありえない……。私が死んだのは、間違いなく年末だったはず。十二月、冬休みに入る直前で……。
鼓動が早まる。ありえない考えが脳裏をよぎり始めた。
その時、教室の扉に近づく微かな足音が聞こえた。
機械的に顔を上げると、入り口で躊躇う見覚えのある姿が目に入った。
時間が凍りついたようだった。
彼女だ。
オフィーリア。
入り口でうつむき、鞄のストラップを握りしめて立っている。肩にかかる柔らかな栗色の巻き毛、皺ひとつない真新しい制服。その姿はとても小さく、無垢に見えた。
まるで……まるで、初めて会ったあの時のように……。
違う。こんなことがあっていいはずがない。
私は死んだ。はっきりと死を記憶している。あの痛みも絶望も、すべて現実だったはず。
なのに、なぜオフィーリアがここに? まるで今来たばかりのような顔をして?
先生が入ってきて、入り口にいる彼女に気づく。
「皆、新しい転入生を紹介するよ。オフィーリア・ホイットモアさんだ。ロンドンの全寮制学校から転校してきたんだ。仲良くしてあげるように」
その言葉を、私は聞いたことがある。
一言一句、違わない。
口調も、間の取り方も、先生の表情さえも――すべてが記憶と完全に一致していた。
生徒たちの視線が好奇心と共にオフィーリアに注がれる。彼女はおずおずとお辞儀をし、蚊の鳴くような声で言った。
「はじめまして、オフィーリアです。よろしくお願いします……」
その仕草も、言葉も――まったく同じ。
手の震えが激しくなった。
夢じゃない。幻覚でもない。
すべてが繰り返されている。すべてが始まりに戻ったのだ。
私は……生まれ変わったの?
本当に、死に戻ったというの!?
激しい喜びが湧き上がり、思わず声を上げて笑いそうになった。
死に戻り!
それがどういうことか、わかっているわ。やり直せるということ。すべてを変えるチャンスが巡ってきたということ!
復讐のチャンスが!
入り口に立つあの無垢な少女を見つめると、胸の奥で復讐の炎が燃え上がった。
前の人生で、オフィーリアは私の優しさと信頼を利用し、私を破滅させた。あの恐ろしい罠を仕掛け、あの男たちに襲わせた……。
拳を固く握りしめ、爪が掌に食い込む。
彼女は私に地獄のような苦しみを味わわせ、絶望の中で死なせた。名誉も、尊厳も、命さえも奪った。
でも、今回は違う。
今度はわかっているもの。彼女の正体も、その手口も、すべての企みも。
