第5章

 莉奈視点

 医務室でのあのキス未遂以来、真と私の関係は微妙な緊張感をはらむものになっていた。

 練習中には視線が絡み合い、部室の入り口で「偶然」を装ってぶつかり、何気ない接触に頬を染めては心臓を高鳴らせる。だけど、どちらもその一線を越えようとはせず、まるで完璧な瞬間を待っているかのようだった。

 颯真の監視も、日に日に厳しくなっていた。私たちが少しでも近づいているのを見つけると、すぐに駆けつけてきて私を「守ろう」とするのだ。

 『もう、兄さんったら、私は子供じゃないんだから!』

 水曜の午後、私はキャンパス内のカフェで、沙羅編集長に提出するための今週分の取材原稿を整理していた。今...

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