第102話

ダラス視点

クインランの声には誰の耳にも明らかなパニックが滲んでいた。私は自分たちの部屋のドアを勢いよく開け放つ。すると、クインランの部屋の戸口に、ほとんど裸同然の格好をした女が立っているのが見えた。

エヴェレットの言葉と彼女を見るその視線に、私は呆れて口が開いた。でも同時に、私たちの絆を通して彼の浮かれた気分も伝わってくる。あの馬鹿野郎、彼女をからかっているんだ。そして彼女はまだそれに気づいていない。

「いいえ、道に迷ったわけではありません。未来の王として、あなたのお兄様には美しい妃が必要ですわ。使用人の扱い方、パーティーの準備、客のもてなし方を心得た妃が」女は彼にそう答えた。

「...

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