第9章

 藤堂延はニューヨークに居座り始めた。

 私の行く先々に、彼は亡霊のように現れた。

 ある日、業界のトップだけが招かれる原石のプライベートオークションに参加した時のことだ。

 予想通り、藤堂延もそこにいた。

 一つの原石の前で、私は足を止めた。

 皮膜は薄く、ライトを当てると内部に純粋なピンク色が透けて見える。極めて希少なトップクオリティの原石だ。

 デザイナーとしての直感が、カットされた後の息を呑むような美しさを幻視していた。

 ルーペでその紋様を観察していると、耳元で藤堂延の声がした。

「それが気に入ったのか?」

 いつの間にか背後に立っていた彼は、私の横顔を貪るように...

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