第80章

色々な状況を想定していたが、海子が突然旅行を提案するとは夢にも思わなかった。この不意打ちに頭が回らず、咀嚼中の口を開けたまま呆然としてしまった。

「お疲れさま、どうしたの?急に旅行したいって言っただけで、そんなに驚かなくても……」呆けている私を見て、海子は急に顔を赤らめて甘えるように言った。

「あ、いや……何でもない。旅行か、いいね。時間を空けて、必ず一緒に行こう」慌てて我に返った私は急いで答えた。海子に怪しまれないように。私は俯いて食卓の料理を掻き込み始めた。父が特別に心を込めて作ったのか、今日の料理は格別に美味しく、特別な味がしていた。その味の名前は「罪悪感」だった。

「結婚してか...

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