第26章

「いや、華ちゃん。聞いてくれ」

八朔綾人の声色が、にわかに真剣味を帯びた。

「今、君が戻るのは得策じゃない」

「どうして?」

月見華は焦りを募らせた。

「心ちゃんの情緒がまだ安定していないんだ。君が突然現れたら、あの子は余計に混乱してしまう」

八朔綾人は一呼吸置き、諭すように続けた。

「それに、国内のプロジェクトは動き出したばかりだ。鉄扇さんとの提携はこの局面において要となる。今、君が現場を離れるわけにはいかないだろう? 朝霧家のため、そして何より君自身のために、そこに留まってやるべきことを全うしてくれ」

彼の言葉は冷水のように、今すぐ飛行機に飛び乗ろうとしていた月見華の衝動...

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