第38章

漆野哲也の目には、その二人が同一人物だとは到底思えなかった。

だが、鴉崎社長だけは……まるで何かの妄執に取り憑かれたかのように、その可能性を捨てきれずにいる。

「朝霧様、少々お待ちいただけますか。鴉崎はただいまビデオ会議中でして、長引く恐れがございます」

漆野は恐縮した様子で告げた。

月見華は軽く頷くと、コーヒーカップを優雅に傾け、一口啜る。

「構いませんわ。ですが十五分を過ぎるようでしたら、鴉崎社長にお伝えください。商談はまた日を改めて、と」

漆野は心底驚き、我が耳を疑った。

これほど強気な態度に出る来客など、見たことがない。

周囲の社員たちも、堪えきれずに声を潜めて囁き交...

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