第52章

鴉崎響は挨拶代わりに軽く顎を引くと、すぐに視線を舞台へと戻した。

二人の間には、何とも形容しがたい微妙な空気が漂っていた。

舞台上でインタビューを受けていた月見光も、当然その光景を目にしていた。

月見華が鴉崎響の隣に促され、腰を下ろすのを見た瞬間、彼女の張り付いたような笑顔が凍りついた。

危うく表情を取り繕う仮面が剥がれ落ちそうになる。

(クズ! よくもまあ、どの面下げて! なんて図々しい女なの!)

(響さんが隣に座らせるなんて!)

彼女は深く息を吸い込み、胸の内で逆巻く嫉妬の炎を無理やり押し殺すと、マイクを握り直して新曲の話題へと移った。

「実は、この曲のインスピレーション...

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