第54章

月見光は顔色を変えた。「朝霧さん?」

「あいにくだけど、今日はお酒って気分じゃないの」

月見華は唇の端を吊り上げた。「まさか月見さん、無理強いなんてしないわよね?」

「もちろんよ」

月見光は奥歯を噛み締めた。言い返そうとした矢先、千鳥足の男がよろめきながら通りかかり、彼女にぶつかった。

「きゃあっ!」

月見光が悲鳴を上げ、グラスの中のシャンパンがすべて月見華の淡い色のワンピースにぶちまけられた。

液体は瞬く間に広がり、無惨な染みを作っていく。

「あら、ごめんなさい! ごめんなさい、朝霧さん!」

月見光は大袈裟に狼狽してみせた。

「わざとじゃないの、あの人がぶつかってきたか...

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