第62章

空見涼弦は、心が消え去った方向を睨みつけ、忌々しげに唾を吐き捨てた。

「逃げるだと? どこまで逃げられるか見ものだな! 後でたっぷりと可愛がってやるから覚悟しとけ!」

一方の月見光には、心になど構っている暇はなかった。

彼女はアシスタントに指示を飛ばし、自分に不利な音声データや写真が流出せぬよう、記者たちを食い止めようと必死だった。

その時だ。鴉崎響が現れたのは。

会場中の視線が、瞬く間に彼に吸い寄せられる。

黒のスーツに身を包んだ鴉崎響は、淡白な眼差しで周囲を一巡した。だが、そこに月見華の姿はない。

月見光は藁にもすがる思いで、早足に歩み寄った。

「響さん、遅かったじゃない...

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