第71章

かつてと同じ光景でも、そこにいる人の心はもう、あの頃とは違う――。

すべてを吐き出し、ようやく呼吸が整ってきた彼に、月見華は熱いタオルを絞って差し出した。

「顔を拭いて。漆野哲也に迎えに来させるから」

鴉崎響はタオルを受け取り、乱暴に顔を拭ったが、洗面台に寄りかかったまま動こうとしない。

月見華が肩を貸してリビングまで連れて行くと、彼はそのままソファに倒れ込み、泥のように眠ってしまった。

「ここで寝ないで」

月見華は彼の腕を引いて起こそうとする。

その瞬間、鴉崎響が突然手を伸ばし、彼女の手首を強く掴んだ。

「行くな……」

含みのある声で、彼はうわごとのように呟く。

月見華...

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