第72章

立ち込める紫煙の中、彼の顔色は恐ろしいほどに陰鬱だった。

背もたれに深く身を預け、瞼を閉じる。脳裏で繰り返し反響するのは、月見華が微かに漏らしたあの一言――『響』。

あの女は、まるで霧のようだ。掴みどころがなく、指の間をすり抜けていく。

だというのに、磁石のように強烈に俺を惹きつけてやまない。手放すことも、冷静でいることさえも許さないほどに!

……

鴉崎響を見送った後、月見華は身なりを整え、天ノ川夢乃との待ち合わせ場所へと車を走らせた。

二人がよく利用するカフェだ。

店に入ると、すぐに天ノ川夢乃が立ち上がり、華の手を引いてソファに座らせた。

「華ちゃん、見て! これで私たち、...

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