第45章 一度の治療、六十億

「うん」

言い終わって中村淳也は篠崎沙耶香の方を見た。「篠崎さん、朝食を二人分買ってきました。もう一つはあなたの分です」

篠崎沙耶香は中村淳也のこの仕事ぶりを見て、どんな表情をすれば良いのか分からなくなった。

さすがは松見和也の側にいられる人間、やはり抜け目がない。

時間を守るだけでなく、あらゆる配慮が行き届いている。

でも……

いつから松見和也に自分の家で身支度を整えたり、朝食を食べたりする許可を与えたというのだろう?

松見和也はすでに立ち上がり、篠崎沙耶香を見つめながら言った。「洗面所を借りるけど、構わないよね?」

篠崎沙耶香はその言葉を聞...

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