第104章 平手打ち

白鳥紗雪は薬物を隠し終えると、足早に雲田茜たちの部屋を後にした。その行動に信憑性を持たせるため、彼女はわざわざ二階の洗面所へ向かい、念入りに手を洗い始める。

だが、折悪しく——あるいは折良くと言うべきか、ちょうどそのタイミングで雲田茜もまた二階の洗面所へと姿を現した。

白鳥紗雪は鏡越しに、背後に立った雲田茜を認める。手を洗い終えた彼女は、口元に冷ややかな笑みを浮かべて言い放った。

「もっと高尚なご身分かと思っていたけれど、あなたも同じように二階のトイレを使うのね?」

雲田茜の顔には、淡い笑みが浮かんでいた。彼女は鏡の中の白鳥紗雪を見つめ返し、静かに告げる。

「トイレに来たつ...

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