第267章 幸運な雲田隆

その一方で、雲田茜は医師たちが雲田隆をストレッチャーに乗せ、病室へと運び込んでいくその背中をじっと見つめていた。

雲田隆は依然として昏睡状態にある。だが、彼は幸運だった。あの一発の銃弾は、彼から命まで奪うことはなかったのだ。

賀川時が歩み寄り、彼女の華奢な肩をそっと抱き寄せる。

「親父さん、どうだ? 傷は深いのか?」

雲田茜は首を横に振ると、ポケットから一台のスマートフォンを取り出した。画面の中央を、弾痕が無残に貫いている。

「悪運だけは強い人ね。このスマホが盾になってくれたの。心臓まであと二センチってところで弾が止まってたわ。医者も『なんて運のいい男だ』って呆れてた」

言い終え...

ログインして続きを読む