第40章

そう考えると、佐藤絵里の気持ちは少し明るくなり、さっきのように憂鬱ではなくなった。

坂田和也を一度だけでも出し抜けたというのは、なかなか簡単なことではない。貴重な機会だった。

「私、すごいでしょ?」佐藤絵里はわざと尋ねた「ほら、モデルルーム体験に来ただけなのに、ついでに一部屋売っちゃったよ」

坂田和也は怒るどころか笑みを浮かべ、彼女の笑顔を湛えた目を見下ろした「ああ、すごいよ」

佐藤絵里はますます得意げになった。

「ですが」坂田和也は問い返した「伊藤社長が立派な伊藤家の屋敷に住まずに、なぜ南城レジデンスの物件を買おうとしているか、知ってる?」

彼女は言葉に詰まった。知らなかった。...

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