第44章

彼はきっと手早く立ち去って、この二人に空間を残すだろう。

坂田和也は佐藤絵里の手に触れた。うん、少し温かくなっている、さっきのように冷たくはない。

猫のように眠る彼女を腕の中に抱きながら、今のこんな朦朧とした状態では本音を話しているのだろうと思うと、別の思いが湧いてきた。

「佐藤絵里」

返事はない。

「もう寒くない?」

「寒い……」彼がそう尋ねると、逆に彼女は答えた「行かないで……」

坂田和也は手を伸ばして彼女の鼻をつまんだ「今、抱きついているのが誰か分かる?」

「えっと……湯たんぽ?それともカイロ?……」

「……もう一度チャンスをやる」

佐藤絵里はぼそぼそと言った「声を...

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