第60章

佐藤絵里が下を見ると、月明かりに照らされて、そこには……

蜘蛛!

彼女の手のひらほどもある大きな蜘蛛が!

「きゃあああ!」佐藤絵里は耳を刺すような悲鳴を上げ、目を閉じたまま必死で振り払うと、前へと命がけで走り出した。

道路の脇で、坂田和也は車を運転していたとき、突然女性の悲鳴が聞こえてきた。

すぐにブレーキを踏み、窓を下げたが、もう何の音も聞こえなかった。

幻聴だったのか?

でも、今しがた確かに聞こえたような気がしたのに。

佐藤絵里のことが心配で、神経質になっているだけなのか?

坂田和也は車を路肩に寄せ、イヤホンに向かって言った「俺の車のGPS位置から、すぐに人を向かわせろ...

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