第114章 あの手この手で泊まる

誰かに気に入られるには、まずは子供と女性から攻めろ——母のそんな教えを、彼はふと思い出していた。

「克哉くんは、本当にいい子ですね」

池田大和が感心したように言った。

そうこうしているうちに、田中春奈と池田大和はマンションのエントランス前まで辿り着いていた。

そこで出くわしたのは、江口匠海と大野博の二人だ。

「江口のおじさん!」

小さな体で田中春奈の手を振りほどき、克哉は江口匠海のもとへ駆け寄っていく。

池田大和の表情が強張った。まさか江口匠海まで現れるとは予想していなかったのだ。

「克哉、悪いな。おじさん、ちょっと体調を崩していて抱っこしてやれないんだ」

江口匠海は視線を...

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