第116章 誰も脅したことはない

「『永夜クラブ』のデータベースを焼いたのはなぜだ? 誰の指図だ?」

坂本陽斗は酒が入っていた上、腰に鋭利なものを突きつけられていた。大野博が持っているのがナイフだと誤解し、うかつに動くことができない。

「あ、あんたは誰だ?」

「質問に答えろ。データベースを焼いたのはお前か?」

腰に押し当てられた刃物の感触が強まる。坂本はこれ以上隠し通せないと悟った。

「助けてくれ! わざと焼いたんじゃない、二百万で頼まれただけなんだ!」

大野博はようやく手がかりを掴んだ。

「誰に買収された?」

「女だ。会った時はマスクとサングラスをしていて、顔は見てねえ。ただ若い女だったってことしか……金は...

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