第121章 濡れ衣は着ない

「当然だ。もう上がって帰ろう」江口匠海は彼女を疲れさせたくなくて、胸を痛めた。

「でも、まだ誰がやったか……」田中春奈は驚いて立ち上がった。

江口匠海は隠さずに告げる。「大野博に実験室の全職員の、ここ一ヶ月の銀行口座記録を洗わせた。ある女の口座に突然、三千万もの巨額が振り込まれていたんだ。送金元はアイフィ製薬グループの海外口座だ」

田中春奈の推測とぴったり一致した。実験室の中で彼女に最も強い恨みを抱いている者といえば、井戸玲奈しかいない。

さらに江口匠海は、井戸玲奈が田中春奈を陥れるための捏造動画を用意し、それを脅しに使おうとしていたことまで突き止めていた。

「やっぱり彼女だったの...

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