第124章 仕組まれた罠

彼女は窓の外へと視線を向けた。空はどんよりと灰色に曇り、まるで今の彼女の心模様を映し出しているかのようだ。

これからどこへ向かえばいいのか、皆目見当もつかない。

ふと、携帯電話の着信音が鳴り響く。画面に目を落とすと、そこには「大野博」の文字が表示されていた。

マンションの前に到着したとの連絡だ。

大野博は車を走らせ、市内中心部の商業ビルにあるフォーマルドレスのオーダーメイドスタジオへと直行した。

数日前、江口匠海が彼女のために特注したドレスを、今日ようやく受け取ることになっていたのだ。

試着室から姿を現した時、彼女はまるで別人のように生まれ変わっていた。

精巧なメイクアップが彼...

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