第136章 彼女と無関係ではない

田中春奈の脳裏に、とっさにある人物の姿が浮かんだ。田中由衣が今日、江口家に現れたこと——あの一件と彼女が無関係であるはずがない。だが、春奈はその推測を胸の内に留めるだけに止めた。確たる証拠もないのに、滅多なことを口にするわけにはいかないからだ。

二時間あまりの救命処置の末、ようやく江口翁は病室へと移された。半日も経たないうちに、彼は数歳老け込んだかのように見え、顔色も著しくやつれていた。

そこへ林田が、服用していた薬をすべて持って駆けつける。主治医の診察室へ運び込まれた薬の瓶を、江口匠海は医師の傍らで、一瓶ずつ鋭い視線で検分していた。

医師が一粒の丸薬を取り出す。その表面の刻印と大きさ...

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