第25章 彼に仕事を指示する

「あなたはソファで大人しく座っててくれないかしら。私の邪魔をしないで」

しかし、彼女はすぐに我に返り、男の腕から逃れて慌てて脇へと身を引いた。

江口匠海は無垢な様子でぱちくりと瞬きする。ただ彼女に手伝いが必要か見に来ただけなのに、まさか責められるとは思ってもみなかった。

彼は目を細め、口元に笑みを浮かべる。「手伝おうか?」

「必要ないわ」田中春奈は眉をひそめ、冷たく言い放った。

江口匠海は仕方なくソファに戻って腰を下ろす。彼の視線は、キッチンで忙しなく立ち働くその背中をずっと追いかけていた。

彼女がご飯を炊き、おかずを炒め、スープを煮込む様子を見ていると、まるでダンスで...

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