第29章 親子活動

その変貌ぶりに、はっと目を奪われ、胸に名状しがたい喜びが込み上げてきた。「行こう」江口匠海が淡々と告げる。

田中春奈は彼の後ろに続き、二人は一緒に親子イベントの会場へと向かった。

心の内では幾ばくかの不安を抱えていたが、江口匠海がそばにいると思うと、不思議と安心できた。

田中春奈の後ろをついてきた下村月は、彼女が江口匠海の高級車のドアを軽々と開け、優雅な仕草で乗り込むのを目の当たりにした。その光景に、下村月は瞬時に目を見開き、驚きと嫉妬が入り混じった複雑な感情が胸の中で渦巻いた。

田中春奈のその動きは、彼女には無言の自慢のように映った。

下村月はぎゅっと下唇を噛み締め、挫折感に苛ま...

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