第31章 彼は彼女を手に入れたい

「病院に連れて行くわ」田中春奈はバッグを手に取り、息子の手を引いた。

レストランのマネージャーもすっかり怯えてしまい、会計を全額免除した。恐怖で泣き出してしまった店員は、床にへたり込んで号泣している。

田中春奈はそっと彼女の肩を叩いた。「大丈夫よ、心配しないで」

レストランを出ると、田中春奈は急いでスマホで運転代行を呼んだ。その到着を待っている間。

江口匠海は、なぜか笑みを浮かべていた。

「よく笑っていられるわね。痛くないの?」田中春奈は心配そうに言った。

「痛くない。春奈と克哉がそばにいてくれれば、何も感じないよ」彼女は呆れて男に白目を剥いた。本当に、怪我をしてもおとなしくして...

ログインして続きを読む