第55章 花を送る

田中春奈は目を丸くし、少しむっとした様子で江口匠海を見つめた。「どうしてまた戻ってきたの?」

「朝食を持ってきた」江口匠海は眉を上げ、テーブルの上の朝食を指し示した。

田中春奈は振り返って大きく開かれたままのドアを一瞥し、心の中で後悔の念に駆られた。

この男、さっき部屋に入ってきて私の寝顔を見たのではないだろうか?よだれは垂らしていなかった?みっともない格好は?あるいは、寝言を言っていただろうか?

そこまで考えると、田中春奈の頬が微かに赤らんだ。彼女は俯いて、まだしも控えめなデザインのパジャマに目を落とし、一つ咳払いをした。「もう帰っていいわよ」

「君が朝食を食べ終わるのを待って、...

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