第56章 花に怒られたの?

「ええ、生けておけば数日は鑑賞できるし、欲しい人がいたら分けてあげてもいいわ。持っていってちょうだい」田中春奈はにこやかに頷いた。

佐藤優奈はその大きな薔薇の花束を抱え、分けに出ていった。

案の定、あっという間にその大きな花束は奪い合いの末になくなってしまった。

オフィス中の誰もが、田中春奈の熱烈なファンから贈られたのが輸入物の薔薇だと知ることになった。

その背後には、一体どの富豪が陰で支えているのだろうか?

午後の陽光が窓からオフィス内に差し込み、幾ばくかの暖かさをもたらしていた。

桜井美咲が軽く田中春奈のオフィスのドアをノックし、入ってきた。口元には笑みを浮かべ、どうやら世間...

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