第62章 携帯電話失って戻る

少年は少し名残惜しそうに江口匠海を見た。「江口おじさん、じゃあ僕、もう寝るね」

「ああ!」江口匠海は笑って頷いた。

少年はソファから飛び降り、嬉しそうに自室へと走っていった。

ソファの上で、男はシャツのボタンを上から三つ外し、引き締まった胸筋を露わにした。

少年がいなくなり、彼の視線はより一層遠慮がなくなり、まっすぐに田中春奈へと注がれる。まるでその視線で彼女を呑み込んでしまおうとするかのようだ。

「話、しないか?」江口匠海が不意に口を開いた。その声は低く、色気を帯びている。

田中春奈はリビングを片付けながら、顔も上げずに拒絶した。「もうお帰りください」

男は目を細める。クリス...

ログインして続きを読む