第71章 自ら私にキスして

三島拓海は一瞬にして驚愕し、膝から力が抜けるのを感じた。

なんてことだ! 田中春奈のそばにいるこの男は、まさかペナン一の富豪、江口家の跡継ぎだというのか?

彼は、この大物をうっかり怒らせるようなことをしなくてよかったと胸を撫で下ろした。さもなければ、どう殺されていたかもわからない。

一方、キッチンでは、田中春奈が江口匠海のために一心に麺を茹でていた。

十数分後、湯気の立つトマトと卵の麺が食卓に並べられた。「江口社長、ご飯ですよ!」

彼女は麺の入った丼を慎重にリビングの食卓まで運んだ。江口匠海は子供部屋から出てくると、椅子に腰掛け、一言も発さずに麺を食べ始めた。食べ終わるま...

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