第74章 求められた招待

「信じるものか。好きにしていろ。それだけだ」江口匠海は冷たく言い放ち、電話を切ろうとした。

しかし、電話口で田中由衣が突然泣き出し、懇願を続けた。「匠海、あの時のことを忘れたの? 私に償いをするって約束したじゃない」

「いくら欲しい。言い値でいい」江口匠海はもはや我慢の限界だった。

その言葉を聞いた田中由衣は、心の中の無念と失意を抑えきれなくなった。まるで冷たくあしらわれた若妻のように、恨みがましい声で哀れっぽく言った。「お金なんていらないわ。この前もそう言ったはずよ」

江口匠海は田中由衣を傷つけたいわけではなかったが、彼女に何の約束もできなかった。

彼は眉間を揉みながら言った。「...

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