第78章 他人扱いしない

田中春奈はおとなしく腰を下ろした。江口さんも彼女を他人行儀に扱わず、単刀直入に尋ねた。「さっき私が言っていた、好かん奴が誰か分かるかね?」

「江口家については、あまり詳しくありませんので」田中春奈は首を横に振った。だが心の中では、先ほどの江口匠海の怒りは、おそらくその人物と関係があるのだろうと推測していた。

「江口祥生、私の隠し子で、匠海の叔父にあたる男だ。昔、私は嵌められてな。酒の勢いで当時の会社の秘書と関係を持ってしまった。その後、彼女は密かに妊娠し、子供を産んだ。二十年以上前、その子が親子鑑定書を持って私の前に現れた。私も一度は一族に迎え入れ、チャンスを与えようと考えた。だが、奴は...

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