第90章 ヤキモチ江口社長、登場

彼女は観念したように頷いた。

「池田さん。母が何を吹き込んだのかは知りませんが、私はそう簡単に騙されませんよ。確認させてください、何をしに来たんですか?」

彼女の眼差しが、ふいに鋭さを帯びる。

「母に言われて来たんでしょう?」

池田大和は気まずそうに指を組んだ。

「おばさんに頼まれまして……」

やはり母親の差し金だったようだ。

「池田さん、私には子供がいます。その点はご存知でしょう? ですから、あなたには釣り合わないと思います」

田中春奈はそう言い捨てて、席を立とうとした。

「待ってください」

池田大和も慌てて立ち上がる。

「田中さんのおっしゃることはよく分かりました。...

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