第95章 正体を現す

それが世界限定モデルであり、国内にも数本しか存在しない代物であることを、彼女は知っていた。明らかに和田七瀬の実家は、舌を巻くほどの資産家だ。彼女が入社してきた目的も、単に自分たちと競い合うためだけではないことは明白だった。

その時、入り口付近がにわかに騒がしくなった。

江口匠海が到着したのだ。彼の登場で、場のボルテージは一気に最高潮へと達する。

全員が示し合わせたように起立して彼を迎えた。和田七瀬と田中春奈も例外ではない。

彼女たちの視線は、まるで彼を食い入るように見つめ、その姿を追いかけていた。

奇しくも、田中春奈の席は和田七瀬の真正面だった。まさに因縁としか言いようがない。

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