第130章:リース

私は岩だらけの小道を駆け上がり、滝へと急いだ。足元など構ってはいられない。ソーヤーがすぐ背後に迫っている。「グレース?」呼びかける声から、焦燥感を消すことができなかった。

しかし、滝の轟音が私の言葉をかき消してしまう。どんな音も彼女には届かないだろう。私は二人の間にある絆を手繰り寄せてみたが、彼女が築いた心の壁は相変わらず堅牢だった。

滝の裏へと続く細い道を進むと、すぐに小さな洞窟の入り口が目に入った。私はソーヤーに「見つけた」とマインドリンクを送る。今すぐ飛び込んで番(つがい)を抱きしめたいと全身が叫んでいたが、私は入り口で足を止め、中の様子をうかがうことにした。

「ルナの話を持ち出し...

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