第171章:恵み

心臓が早鐘を打っていた。一体どこへ行ってしまったの?トイレ、更衣室、用具入れ、すべての教室もざっと確認した。彼はどこにいるの?

私は一瞬立ち止まった。考えて、グレース。考えるのよ!その時、ハッとした。まるで一生前のように感じる昔、イーサンが教えてくれたことだ。ライカンは人狼のようにテレパシーで会話はできないが、互いの気配を感じ取ることはできる、と。私の中のライカンなら、彼を感じ取れるだろうか?

私は目を閉じ、集中しようと試みた。何をしているのか自分でもさっぱり分からなかったが、途方に暮れていた私には、とにかく何かを試す必要があった。

「グレース?」

本能に従おうとした矢先――少なくとも...

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