第23章:リース

俺は執務室の椅子に座り、疲れ切った手で髪を乱暴にかき上げた。この数日間、あの怪物について調べ回ったというのに、なぜ何一つ手がかりが見つからないんだ? 侵入経路も、追跡すべき匂いも、どこを探せばいいのかという目星すら皆無だ。書物にも記述はなく、有力な同盟相手からの情報もない。どんな手段を講じても完全に空振りに終わり、苛立ちは募るばかりだった。

思考に沈んでいた俺を現実に引き戻すように、執務室のドアを叩く大きな音が響いた。

「入れ」

ドアの向こうにいるのが俺のベータであることは百も承知で、俺は声をかけた。

「まったく、イカれた状況だな」

レオンはそう言い放ちながら入室すると、後ろ手でドアを乱...

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