第255章:リース

グレースの手が俺の袖を強く握りしめ、俺も彼女の前腕をしっかりと掴み返した。彼女の体が強張るのも、その顔に浮かぶ恐怖の色も、見ていて辛かった。「もういい、忘れよう。知る必要なんてない、ここから立ち去ろう」と喉まで出かかったが、何かが俺を押しとどめた。彼女は自分の「力」にアクセスしようとしている。それも、ほとんど躊躇なく。これまでの彼女なら、変身することや力を使うことなど夢にも思わなかっただろうが、今ではそれがまるで第二の天性のように馴染んでいる。かつて見たことのない変化だった。彼女を誇らしく思う反面、今は心配の方が勝っていた。

「あの子、大丈夫なの?」

母が尋ねた。その顔は冷静さを装っていたが...

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